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私は何故自分が小さな不幸に見舞われるのか、気付くと何ひとつ持ってない今があるのか、考えることがあります。
常に感じられる不安感は霊感の強すぎる証であり、殊この数年は陰鬱な霊の想念を強く見て取れるようになっていました。
冷静に我が身に起こった出来事を回顧し、マイナスの霊力の力場を探ることに努めましたが、日々の生活の中でその作業を行うことは困難でしたが、やっと夏休みという時間をいただき、今日ようやく原因を追及できるようになったのです。
私の住まいは墓所の近くにあります。
常に死者のそばにいる環境にあって、その影響を受けないわけはありません。
私に苦痛を与える霊の正体を突き止め解決しなければなりません。
覚悟を決めて私は最新の電子機器を片手に、私に害を為す者が潜む領域に覚悟を決めて踏み込むことにしたのです。 |
▲狛江無常墓場へ至る道 |
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早くもガイガーカウンターが低い唸りを上げます。
多くの者が私を見ていました。
これが昼間と言えるのでしょうか。
辺りは鬱蒼とした空気が漂い、景色は目で見えるのですが、光は太陽が放つそれとは別質のものに感じられます。
闇の世界の深淵が全ての光を奪い、そこでべつの光に変換され放たれるのです。
彼らには生を持ってこの領域に踏み込んできた私がとても不快な存在なのでしょう。
今にも襲いかかってきそうな暴力に満ちた邪悪な念が私を包みます。
だからといって私もここで引き返すわけには行きません。
そのような悪しき因縁を断つために敢えて危険に飛び込んだのですから。
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▲数々の無念・怨念が刻まれた石の像 刻んだのは常人が及ばぬ力だ▼ |
死者の領域は無限の闇に向かって広がっていた。
声無き叫びが耳に痛い。
生あるものが立ち入ってはいけない領域…近所にあるこの世界は私の想像以上に底深く力強いものだったとは…。
これが私を包む世界の真実だったのです。
私は愕然となり、その場へ力なく腰を落としました。
像から、樹々の間から、空間から嘲りの声がこだまします。
それでもまだここはほんの入口に過ぎません。
私を苛む者はここよりもっと先にいることはわかっていました。 |
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私は普通の人より体力はあります。
闇の渦が私を通り抜け、一度は力を失いましたが徐々に立ち上がる力が湧いてきました。
荷物の無事を確かめ歩き出し、暗黒連峰の尾根をひとつ越えることができました。
尾根を越えるとまた一段と険しい道が目の前に。
そして目の前の険しい道の先は恐怖の靄で覆われ、いかに剛胆な者でも足は竦みます。
一つ一つの景色は意味を持ち、無言でその存在を圧力をもって私に示してくる。
この暗いエネルギーは私を憎み、欲しているのがわかります。しかし彼らは私に手出しは出来ないようです。
これがわかったことで道中は楽になったのですが、この邪悪極まる輩を束ねている意志の存在が明確になり来たるべきその時に対する恐怖はより色濃くなりました。
でも何故かこの世界に入り込んだことの後悔はありませんでした。
何故なら例えここで闇のけだものたちの餌食になり、今私の生命が潰えることも、私に害を為す者の所在を掴めぬまま少しずつ蝕まれて生命が潰えても、かかる結果は同じなのです。
少しずつ苦痛を与えられ苛まれるなら、いっそ一思いにという気持ちが強く働いていたのです。
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▲恐怖山脈尾根の様相 |
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生きていくことはそれだけで困難と厄災の影が差し込んでくるもの、そういう考えは正しいのでしょうか?果たして。
不幸は先祖霊の因縁と深く関わっています。
因縁を浄化することによって幸福はやがて訪れます。
人は信仰によって霊的ステージを高めることが出来るのです。
あるものは解脱を得るために財産を捨て、欲望を捨て米だけを食することによって宇宙と一つになることができました。
それでも肉体的な欲求を断ち切ることができず、自らを油の入った壺に下半身を沈めました。
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恐怖に竦む足、邪悪を束ねる意志との対面を思う不安。
しかし、因縁を断ちよりよい明日を確実なものにしなければならない!という勇気が私の歩を確実なものにしていました。
魂の救済を求めての戦い。
これまで受動的な生き方をしてきた自分が初めて自らの意志で生を勝ち取りに行く…やがて私の歩みは勇気と一体となり恐怖は消え遂に伏魔殿の入口が見えてきました。
そこは邪悪を象徴する建造物が立ち並び、神への冒涜の限りを尽くしたあらゆるものが存在し、私のような忠実なしもべの意志を揺るがす全てに満ち溢れていました。
しかし、今の私にそのようなものは全く意味を成しません。
何故なら私は熱烈な神のしもべなのですから。
そして私は厄災の渦中へと。
何者にも負けぬ信仰と勇気を武器に。 |
ドラゴン魔界旅行はなおも続く>> |
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