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序文


 浴衣を見つけた。夏まで生きようと思った。

 友人と久しぶりに女性を伴い酒を飲んだ。自分ばかりはしゃいでいて、相手が楽しかったのか?などと今頃になって気になり始める。もろもろの不安が押し寄せてきて死にたくなる。しかし同時に、この先電車に乗って読む「ドン・キホーテ」を思い、また生きる気力が湧いてくる。
   〜マスター・ポーの言葉より〜
雪に覆われた山は美しい。
しかし雪が消えた後にはその下から新しい緑が萌え出す。
失うものがあれば得るものがあり、何かを得るには何かを失う。


 雪の日からかなりの時が経とうというところだが(2006年2月4日現在)、ここのところHPの更新もままならず歯ぎしりしている次第。
 いずれこのことも報われ天地の星の星主になれるかと思ってみれば、こんな試練など屁でもない。
 
 この雪の降った1月21日は何となくポエミーな気分になって出勤する際、カメラを持ち出してしまった。
 カメラは美を捉えるためのものであり、私自身が比類なき美の探求者であるからして鞄の中にカメラを押し込む煩雑ささえも厭わなかった。

 そしてその日に出会うであろう様々な美と冒険に胸をときめかせながら、私は自宅を後にしたのだった。
 家を出てすぐにその出会いはあった。
 駅前には小さな竹林と池があって、普段は見過ごしがちな多くの美を雪という一種の厄災によって引き出されていた。
 私が生活に何の不安も無いだけの財力を持つ自由人であり、暇を持て余す富貴の人だったら、このことをもっと雅やかに書き立てられるのであろう…と未だうだつのあがらぬこの身分を大いに恨んだ。

 木々は雪化粧を施し、日中にあっても鬱蒼とした趣の庭園が明るく照らし出されていた。
 この景色を美しいと感じた人が自分以外にもいて、カメラを携えて雪の庭園を眺める少女(多分)がいた。
 「美しい風景ですね。」
 「ええ、私も狛江に住んで長いですがこのように美を愛でる喜びを他人と分かち合ったのは初めてです。」
 「あなたはこれから何処へ向かわれるのですか。」
 「行かなければならないところへ…。」
 「では道中くれぐれもお気を付けください。」

 少女に別れを告げ少しばかり歩いて行くと、知り合いのサイコ紳士がこちらへ向かってきた。
 彼は本物のサイコなので関わりになりたくなく、私はただ天に祈るのみであった。
 今は試練など受けたくはないのです。どうか我が願いをお聞きくださるよう…。
 幸い、サイコ紳士は非常に脆弱な体の持ち主だったので、この寒さに体が耐えられないようで体を丸めて来た道を引き返していった。
 一体何のためにあんなところを歩いていたのだろう。
 サイコを相手にあれこれと詮索することは無意味である。
 理解できないからこそサイコなのだ。

 

 この美しい風景とも別れの時が近づいていた。
 決して涙もろい性分ではないのだが、涙がはらはらと流れていた。
 冷たくも柔らかい自然を離れ無情の人間界に戻らなければならない時はそこまで迫っている。
 
 出会いがあるならば別れがあるのは必定。とはいえ人生というものはあまりにも非情である。私は涙に腫らした顔を人には見られまいと努めて平静を装い、駅へ向かう人の群れに流れ込んだ。
 
 電車の窓からあの愛おしき妖精たちが微笑みながら手を振っていた。

 やがてすべての神秘と優しさから隔離された俗物の荒野に入り、悲しんでばかりもいられないと、この道なき道を歩むことにした。
 
 この私にかくもつらくあたる俗物の世に対し、神は怒りを露にしてくれたのか。
 雪は容赦なく文明社会に降り注ぎ、その機能を麻痺させ、人々の心胆を寒からしめ、あらゆる所業は所詮大いなる自然の法則の下にあってはあまりにもちっぽけで無力であるということを思い知らせていたのであった。

 しかし、人々は愚かでこの猛攻をしても一向に学ばないのだ。
 そして天はあまりにも寛容で罰を与えるよりも包み込んでしまうのだろう。

 私は天の寛容ぶりに不満を抱きつつもこれといって打つ手もなくひとりとぼとぼと街を歩き出した。
 この世に対する数々の呪いの言葉を呟きながら。勿論私とて多少の常識はある人であってみれば、呟きは胸の裡で囁かれたものであることは言うまでもない。
 ネガ・パワーを裡に秘めた私はやがて4つの人ならざる者に出会った。即ち私が望むことを叶えてくれる救いの御使いにして人々のいうところの悪魔であり、魔物といった類のものだ。
 しかし事実は違っていて、これは単に解釈の違いであって、超越者を見るときその人がどう捉えるかによって描かれ方、伝わり方が違うというだけのことなのだ。
 超越者たちは言った。
 「お前の望みによって我々はやってきた。」
 「破滅を願うお前の叫びはしかと我らの領域に届いた。」
 「お前の無念を晴らすときが来た。」
 「その願いは偶然ではなく大いなる意思の摂理だと知るがよい。」
 私は彼らに平伏し、衷情を訴えた。
 「お前の気高き願いは上天に届けられた。」

 その声を聞き顔を上げると彼らの姿は消え、周囲の景色が渦をまき変わり始め、いつしか雪はやんでいた。

 
 その時、私は会社の入り口の近くに立っていた。
 雪がやんだ世界は見た目は同じもののどこか感じが違っていた。
 私の内に感じられる湧き上がる力のせいだろう。
 目の前に見えるビルを破壊することも、赤子の手をねじるよりも簡単に思えてくるほどだ。
 そして、湧き上がる力を抑え込むほど私は愚かな人間ではなかった。
 現に力を持ち、揮うべき場面がある。

 その前に、この感じられる力が果たして本当のなのか
試す必要がある。
と、私はまず会社入り口の踊り場から道路を眺めていた。
 私がただの妄想家なのか、天下に君臨する資質を持つ者なのかを認識するための最初の一歩…。
 目の前を車が通り過ぎようとしていた。私は肚の底から、かの憐れな魂が一瞬の内に漆黒の闇に消え去る事を願った。
 印を結び気合もろとも一喝。すると見事に目の前を走っていた車は光陰だけ残し何処かへと消え去ってしまった。

 私は大いに笑った。
 真実を求める叫びは天に届き、授けられた力は天の意志そのものとなったのだ。

 我が勇猛を挫こうとする邪悪な魔法使いどものいかなる攻撃も今や塵芥も同然なのだ!
 これまでに舐めさせられた辛酸、屈辱もまるで雪が溶けてゆくかのごとく清算されてゆくのだ。

 もはや何者も我が行く先を封じることはできない。
 「見よ、ほとばしるこのエネルギーの奔流を!私に煮え湯を飲ませてきた者共よ、今から後悔したところでもはやうぬらを救う手立ては何一つ無いのだ!」
 私が無人の路上で雄弁をふるっていると、寒空に痩せた体と出っ腹の上半身裸にネクタイを締めた禿頭の中年男が現れた。
 言うまでもない、私をこれまで苦しめてきた悪しき魔法使いの一人である。
 私は無明の業火をたぎらせつつ言った。
 「"欺瞞”よ、よくぞこの私の前に姿を現したな。まさか、許しを乞いにきたのではあるまいな?」
 欺瞞は跪き、私の前に暗がりに光る頭頂部を晒し、何事かをぼそぼそと言い出した。
 「欺瞞よ、貴様のよからぬ企みに躓く私と思うてか!?その貧しき才覚であくまで我が栄光を阻む気か。よかろう、何なりと試してみるがいい!」
 禿頭の奥まった瞳が一瞬輝いた。
 その時地の奥底から轟々たるうめき声が響き私の足元がせりあがってきた。

以下次号…

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