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異国の友が帰国した。
ドラゴン交友史に於いて、初めての身近にいるインテリ、エリート青年だった。
芸術や歴史についての造詣はボンクラ中年の与太知識など及ぶべくもなく、大陸の歴史(もちろん、我々には苦い時代の話についても)や、親子のありかた、音楽について日本語に苦心しながらもよく話してくれた。
格闘技が好きで、その話については自分も大いに意見を語った。
そんな彼が韓国映画を見るならこれ、というので薦めてくれたのがこの作品である。
ハン・ソッキュだ。
軍隊上がりか。帰省の列車。
先の車両にキレイな女の人がいる。
彼女が風にあおられた時、スカーフを手放してしまう。
そのスカーフはハン・ソッキュの元に飛んでくる。
持ち主に返そうとするソッキュ。
その先で彼女はチンピラ風情に絡まれていた…え?凡百のラブストーリー?と、思いきや…その後は、というと。
あまりにも面白くなく、苦しいほどにリアルで悲しくなる青年の日常が待っている。
叙情的に描くでもない。
しかし、見る者を離さない。
きっとどこかで彼が救われる日が来るのだと思い、画面を見続ける。
家族の置かれた生活。茫洋とした前途に日々を過ごす除隊軍人。仕事を見つけなければならない。
いつか列車で会った女からコンタクトがある。
彼女はヤクザの親分の情婦だった。
ソッキュは不機嫌な彼女に誘われるがままにその場を立ち去ろうとするが、手下(ソン・ガンホ)に叩きのめされ、しかし彼らの親分に気の強さを買われたのか、仕事を紹介される。
やがて自分を叩きのめしたヤクザにささやかな復讐を遂げ、親分の盃をわけられることに。
サクセスストーリーではない。どこまで行っても極めてリアルなのだ。
どこへ行っても、誰をしても苦悩や現実があり、夢はあくまで夢でしかない。ささやかな夢、大きな夢。やがて主人公は親分に自分の夢を打ち明ける。
その置かれた立場からすれば、やがては叶いそうな夢ではあった。
しかし、この虚構の中に描かれたリアルワールドでは、やはりか?というように叶うことはない。
オレはカタルシスを感じないまま、重い気持ちを抱えたままエンディングまで見入った。
儚い物語。そして韓国という日本と比較的共有するものが多い文化圏の話。
そのリアルさは痛いほどである。
切なさ、甘酸っぱさは微塵も無い。
青年の苦悩や挫折を描いた、とかそんなものじゃない。
人間社会の暗黒。表社会も裏社会も常に絶望がそこらじゅうに溢れ、甘い現実など一瞬にして崩れ去る。
それでも人は生きている。
生きていて希望や明るい未来を手にすることの出来る人間は果たしてどれほどいるのだろうか。
そして、夢を叶えたように見える人も、本当に幸せの中に在るのだろうか。
この映画のラストを見て希望を見出せるだろうか?そこに作り手のメッセージがあるようには見えなくもなかったが、オレは好意的に捉えることはできなかった。
「映画なんだから、もう少し救いがあってもいいじゃないか!あんた残酷すぎるよ!」と。
あの友が薦めるだけあって作品レベルは高い。
見応えは十分だ。
恐怖映画だよ、これ。
いつまで経っても現実という逃れようの無い漠然とした恐怖が重くこびりつき「嫌なもの見ちゃったな」という感覚が残る。
とは言ってみたものの、この映画の監督、イ・チャンドンの『ペパーミントキャンディ』もおそらく見るだろう、というより「見なきゃ!」という気になっている。
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2005年分はこちら>> |
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